先代とともに立ち上げた新徒弟制度。
橋本建設中興の匠。
若い頃、親方の家の門を叩いて「使ってくれ」と頭を下げたことが、わたしの大工の始まり。当時も、橋本建設で仕事を始めたときもそれが当たり前でした。今でこそ大工になろうと思えば、工務店に勤務することが一般的かもしれませんが、何とか大工になりたいと思う若い人たちに門を広げ、育てていきたいと、当時の社長と始めたのが「新徒弟制度」。最初は、人に教えた経験もなかったですから、ほんとうに手探り状態。自分と同じようにすぐできると期待してしまったり、早く技術を覚えさせないと、と焦ったり。会社の人とも相談しながら、少しずつ形ができていきましたね。大工仕事の本質、やってはならないこと、そんな根本的なことを一人の親方が教える。いろんな人からあれこれ言われるより、一本筋の通った大工になれる、いい制度だと思います。最近は孫弟子たちとも一緒に仕事をする機会も増えてきたけど、あまり口を挟まないようにしています。怪我がつきものの仕事だから、危なそうなことをしてたら声はかけますけどね。
弟子たちの成長は、音や雰囲気で一人前になってきたことを実感します。「どうするんですか?」という質問が「こうしましょう」という意見に変わってきて、自分ですることを見つけられたり、バタバタ動いていた音が落ち着いたものになってきたり。わたしの若い頃は同世代の大工があまりいませんでしたが、弟子たちを見ていると横のつながりもあって、お互いに切磋琢磨しあっている。それは少し羨ましいかな。橋本建設では、腕がいいだけじゃなくて仲間とのコミュニケーション、協調性も必要だと思います。わたしも先代の頃から家庭的な付き合いをしてもらって、逃げようにも逃げられないくらい居心地がいいですね。